刑法の全体像をざっくり解説

刑法〜全体像解説〜 刑法
刑法〜全体像解説〜

はじめに

このページは、刑法の全体像について、条文をベースにざっくりと分かりやすい言葉で解説することを目的としています。

刑法とは

刑法の条文は全部で264条あります。

第一編「総則」は、刑法全体や、他の法律で定められた「罪」についても適用される規定です。
第二編「罪」では、実際にどんなことをしたら犯罪になるかについて規定しています。

総則解説

総則は全13章あります。

第一編 総則
条文定められている内容をざっくり解説
第一章
「通則」
第1条

第8条
①日本国内で罪を犯した場合、刑法が適用されること
②国外で罪を犯した場合の、刑法の適用範囲について
③刑の変更があった場合は新しく出来たものが適用されること
④刑法、第一編「総則」の規定が刑法及び他の法令の「罪」に関しても適用されること
第二章
「刑」
第9条

第21条
「死刑」や「懲役」などの刑の種類や重さ
第三章
「期間計算」
第22条

第24条
刑期や時効などの期間の計算方法
第四章
「刑の執行猶予」
第25条

第27条
執行猶予やその取消しなど
第五章
「仮釈放」
第28条

第30条
仮釈放に関すること
第六章
「刑の時効及び刑の消滅」
第31条

第34条
刑の時効の期間・停止(一時的な延期)中断(時効期間のリセット)・消滅
第七章
「刑の犯罪の不成立及び刑の減免」
第35条

第42条
正当行為、正当防衛、緊急避難、故意、心神喪失、心身耗弱、責任年齢、自首など、犯罪の不成立となるケースや、刑の減免に関すること
第八章
「未遂罪」
第43条

第44条
未遂罪の減刑、免除など
第九章
「併合罪」
第45条

第55条
二個以上の罪に関する刑の内容や処理方法
第十章
「累犯」
第56条

第59条
累犯、再犯の定義や刑の加重に関すること
累犯(「再犯」や「再犯が3回以上続く場合(三犯以上の累犯)」をいう)
第十一章
「共犯」
第60条

第65条
二人以上で共同して犯罪を実行した場合や、犯罪をそそのかした場合、犯罪の手助けをした場合などの刑の内容
第十二章
「酌量減刑」
第66条

第67条
犯罪の情状に酌量すべきものがある場合、刑を減刑することができる
第十三章
「加重減刑の方法」
第68条

第72条
刑の減刑の方法や、刑が2個以上ある場合の刑の選択、刑の加重減刑の順序について

 

罪解説

罪は全40章あります。

第二編 罪
条文定められている内容をざっくり解説
第一章
「削除」
第73条

第76条
第二章
「内乱に関する罪」
第77条

第80条
内乱(国の統治機構を破壊したり、秩序を乱す暴動)の「首謀者・指揮者・参加者」や「内乱の計画・陰謀・手助け等をした者」の刑罰について
第三章
「外患に関する罪」
第81条

第89条
外患(外国から攻撃を受けるおそれ)を引き起こすために「外国と通謀・加担・未遂・計画・陰謀等をした者」の刑罰について
第四章
「国交に関する罪」
第90条

第94条
①外国の国旗や国章(国の紋章やシンボルなど)を侮辱目的で損壊等した場合
②外国に対する私的戦闘を目的とした行為、局外中立(国際紛争で中立の立場をとるべきであるということ)に違反した場合
の刑罰について
第五章
「公務の執行を妨害する罪」
第95条

第96条
①公務員の職務の執行に対し、暴行や脅迫などを加えた者
②公務員の施した封印(物を自由に処分することを禁止する目的で、開くことを禁止する旨の表示したもの)や差押えの表示を壊したり、表示を無視した扱いをした者
③強制執行の妨害をした者、公の競売・入札で不正した者
の刑罰について
第六章
「逃走の罪」
第97条

第102条
裁判の執行によって拘禁(長期にわたって身体を拘束すること)された者が逃走した場合や、逃走の援助をした者の刑罰について
第七章
「犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪」
第103条

第105条
①罰金より重い刑にあたる罪を犯した者・拘禁中に逃走した者をかくまったり、逃したりさせた者
②他人の刑事事件に関する証拠を隠滅した者
③①・②について、親族が行った場合、刑の免除をすることができる
④刑事事件の証人に対し、面会を無理やり頼んだり、脅した者
の刑罰について
第八章
「騒乱の罪」
第106条

第107条
大人数で集まって暴行や脅迫した者の刑罰について
第九章
「放火及び失火の罪」
第108条

第118条
①人がいる建造物
②人がいない建造物
③建造物以外のもの
放火(意図的に)失火(過失によって)、消火妨害した場合などの刑罰について
第十章
「出水及び水利に関する罪」
第119条

第123条
出水(水を使用)し、
①人のいる建造物
②人がいない建造物
に損害を与えたり、水害を防ぐことを妨害した場合などの刑罰について
第十一章
「往来を妨害する罪」
第124条

第129条
①陸路や水路、橋を壊したり通れなくした者
②鉄道、灯台やそれらの標識を壊し、危険を生じさせた者
の刑罰について
第十二章
「住居を侵す罪」
第130条

第132条
正当な理由なく、人の家などの建物や船に
①侵入した者
②退去の要求に応じない者
の刑罰について
第十三章
「秘密を侵す罪」
第133条

第135条
①正当な理由なく、封をしてある信書(特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書)を開けた者
②医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人
③以前に②の職に就いていた者
が正当な理由なく、業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らした場合
の刑罰について
第十四章
「あへん煙に関する罪」
第136条

第141条
あへん煙(タバコのようなもの)
②あへん煙吸食器具
を輸入、製造、販売、所持した者
③税関職員が①、②を輸入、輸入の許可した場合
④あへん煙を吸食した者
⑤あへん煙の吸食のための場所を提供し、利益を図った者
の刑罰について
第十五章
「飲料水に関する罪」
第142条

第147条
飲料水や水道を汚したり、使用出来なくした者の刑罰について
第十六章
「通貨偽造の罪」
第148条

第153条
使用する目的で
①お金を偽造、変造した者
②偽造、変造したお金を人にあげたり、輸入、取得した者
③お金の偽造、変造のための道具を準備した者
の刑罰について
第十七章
「文書偽造の罪」
第154条

第161条
詔書(天皇の意思表示の公文書)
公文書(国や地方公共団体の機関、公務員が作成した文書)
公正証書(契約や事実を証明するために公証人が作成する文書)
私文書(私人が作成した文書)
電磁的記録(コンピュータで処理される記録)
を偽造したり、虚偽の内容を記載した場合の刑罰について
第十八章
「有価証券偽造の罪」
第162条

第163条
使用する目的で
公債証書(公債とは、国や地方公共団体が国民から資金を借りることをいう。公債証書はその証明書をいう)
官庁の証券(証券とは、株券や債券などの財産法上の権利や義務を記載した紙片をいう)
会社の株券その他の有価証券(有価証券とは、財産権を表示する証券をいう)
を偽造、変造や虚偽の記入をした者の刑罰について
第十八章の二
「支払用カード電磁的記録に関する罪」
第163条の2

第163条の5
人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、クレジットカードやキャッシュカードなどの電磁的記録を不正に操作したり、所持した者の刑罰について
第十九章
「印章偽造の罪」
第164条

第168条
使用する目的で、公印(公務員等が使用する印鑑)私印(個人の印鑑)や署名を偽造した者の刑罰について
第十九章の二
「不正指令電磁的記録に関する罪」
第168条の2

第168条の3
不正なプログラムを人のコンピュータに使用する目的で作成、提供した者の刑罰について
第二十章
「偽証の罪」
第169条

第171条
法律により宣誓した証人(裁判の当事者以外の証人)が、嘘をついた場合の刑罰について
第二十一章
「虚偽告訴の罪」
第172条

第173条
人に刑事、懲戒の処分を受けさせる目的で、嘘の告訴(被害者本人やその法定代理人が、検察や警察に犯罪があったことを申告して処分を求めること)告発(告訴権者(被害者本人やその法定代理人)以外の人が検察や警察に犯罪があったことを申告して処分を求めること)などをした者の刑罰について
第二十二章
「わいせつ、強制性交等及び重婚の罪」
第174条

第184条
①公然とわいせつな行為をした者
②わいせつな物を配ったり、展示した者
③無理矢理、わいせつな行為をした者
④無理矢理、性交をした者
⑤監護者が立場を利用してわいせつな行為や性交等をした場合
⑥営利目的で女子を勧誘し、姦淫(倫理に背いた性交)させた者
重婚(配偶者のある者がさらに婚姻すること)した者(その相手方も同様)
の刑罰について
第二十三章
「賭博及び富くじに関する罪」
第185条

第187条
①賭博をした者や、賭博場を開き、利益を図った者
富くじ(宝くじなどが該当し、商店街の無料の福引などは該当しない)を発売、発売の取次ぎをした者
の刑罰について
第二十四章
「礼拝所及び墳墓に関する罪」
第188条

第192条
礼拝所(神を祀った祠や、寺の本堂、墓場など)不敬な行為(壊したり、汚したり、持ち去ったりすることなど)をした者
②説教や礼拝、葬式を妨害した者
③墓を掘り起こした者
④死体や遺骨などの棺に納めてある物を壊したり、捨てたり、持ち去った者
検視(事故死などの突発的要因で亡くなった人に対し、検察官や司法警察職員が行う死体の状況捜査)を経ないで変死者(不自然な死を遂げた者)を葬った者
の刑罰について
第二十五章
「汚職の罪」
第193条

第198条
①公務員が職権を濫用し、人の権利・義務を侵害した場合
②「裁判・検察・警察」や「その職務を補助する者」、「拘禁された者を看守、護送する者」が、被告人や被疑者に対して暴行、陵辱、加虐の行為をした場合
③公務員が賄賂をもらったり、要求、約束、第三者を利用、あっせんなどをした場合
④賄賂を供与、申込み、約束した者
の刑罰について
第二十六章
「殺人の罪」
第199条

第203条
①人を殺した者、その準備をした者
②自殺をそそのかしたり手助けした者、自殺の依頼を受けて殺したもの
の刑罰について
第二十七章
「傷害の罪」
第204条

第208条の2
①人の身体に傷害を加えた者
②①により死亡させた者
③二人以上で傷害を加えた場合
④暴行を加えたが、傷害に至らなかった場合
⑤二人以上で、人の身体や財産に対し共同して害を加える目的で集合し、凶器を準備した場合や、その準備があることを知りながら集合した者・集合させた者
の刑罰について
第二十八章
「過失傷害の罪」
第209条

第211条
①過失によって人を傷害した者
②過失によって人を死亡させた者
③業務上必要な注意を怠り、人を死傷させた者
の刑罰について
第二十九章
「堕胎の罪」
第212条

第216条
①妊娠中の女子が堕胎した場合
②依頼を受けて堕胎させた者
③医師、助産師、薬剤師、医薬品販売業者が依頼を受け、または承諾を得て堕胎させた場合
④依頼、承諾を受けずに堕胎させた者
の刑罰について
第三十章
「遺棄の罪」
第217条

第219条
①老年、幼年、身体傷害・疾病のために他人の助けを必要とする者を遺棄(捨てて置き去りにすること)した者
②老年者、幼年者、身体障害・病者を保護する責任のある者が、これらの者に対し遺棄・生存に必要な保護をしなかった場合
の刑罰について
第三十一章
「逮捕及び監禁の罪」
第220条

第221条
不法(法律の規定に従わず)に人を逮捕、監禁した者
②①によって人を死傷させた者
の刑罰について
第三十二章
「脅迫の罪」
第222条

第223条
生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨の
①脅迫をした者
②脅迫や暴行を用いて、人の権利・義務を侵害した者
の刑罰について
第三十三章
「略取、誘拐及び人身売買の罪」
第224条

第229条
①未成年者を略取(脅迫・暴行などの手段で相手の意志に反して生活環境から離れさせ、自分の支配下に置くこと)、誘拐した者
②営利、わいせつ、結婚、生命・身体に対する加害目的で人を略取、誘拐した者
③身代金目的で略取、誘拐した者
④日本国外に移送する目的で人を略取、誘拐した者
⑤人身売買をした者
の刑罰について
第三十四章
「名誉に対する罪」
第230条

第232条
①公の場で事実を示し、人の名誉を傷つけた者
②死者に対する名誉毀損や公共の利害に関する場合の特例
③公の場で事実でない事を示し、人を侮辱した者
の刑罰について
第三十五章
「信用及び業務に対する罪」
第233条

第234条
①嘘のうわさを流したり、偽計(人を騙す策略)を用いて、人の信用を害したり、業務の妨害をした者
威力(脅迫や強要、暴行など)を用いて人の業務を妨害した者
③人の使用するコンピュータやその記録を壊したり、不正なプログラムを実行し、業務を妨害した者
の刑罰について
第三十六章
「窃盗及び強盗の罪」
第235条

第245条
①他人の財物を盗んだ者
②他人の不動産を奪った者
強盗(暴行、脅迫をして他人の財物を奪うこと)をした者
④「強盗の計画をした者」、「窃盗した後、強盗となる行為をした者」
⑤強盗が人を死傷させた場合や、強制性交を同時にした場合
の刑罰について
第三十七章
「詐欺及び恐喝の罪」
第246条

第251条
①人を欺いて財物を交付させた者
②コンピュータに虚偽の情報や不正なプログラムを与えて、「不法に財産上の利益を得た者」、「他人にこれを得させた者」
③他人のために事務を処理する者が、自己や第三者の利益を図り、本人に損害を与える目的の行為をした場合
④人を恐喝して財物を交付させた者
の刑罰について
第三十八章
「横領の罪」
第252条

第255条
①自己の占有する他人の物を横領した者
②自己の物で、公務所(公務員が職務を行うために国や地方公共団体が設けている場所)から保管を命ぜられた場合に横領した者
③業務上、自己の占有する他人の物を横領した者
④遺失物、漂流物、その他占有を離れた他人の者を横領した者
の刑罰について
第三十九章
「盗品等に関する罪」
第256条

第257条
盗品やその他財産に対する罪(詐欺、強盗、横領、恐喝など)にあたる行為によって得た物を「譲り受けた者」、「運搬・保管・有償の処分をあっせんした者」
の刑罰について
第四十章
「毀棄及び隠匿の罪」
第258条

第264条
①公務所で使用する文書や電磁的記録
②権利・義務に関する他人の文書や電磁的記録
③他人の建造物や船、物
④差押えや物権を負担、賃貸、配偶者居住権が設定されたもの
境界標(土地などの境目がわかるようにしたしるし)
を壊したり、捨てたりした者⑥他人の信書を隠した者の刑罰について

 

 

第一

PAGE TOP