民法総則 第13回 時効〜取得時効〜

民法総則 第13回 取得時効 民法

取得時効とは

取得時効とは、一定の期間、他人の物や権利を自分のものとして使用していた場合に、その物や権利を正式に取得できる制度をいいます。

具体例として、他人の土地を自分の土地であると勘違いし、その土地の上に家を建て、20年間気付かないまま住み続けた場合(所有権の取得時効)や、本来の所有者ではない者から土地を借りて、その土地の使用を継続したまま、賃料を20年間支払い続けた場合(賃借権の取得時効)などがあります。

※この記事は、2020年4月改正後の民法に対応しています。

所有権の取得時効

民法第162条では、「20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。とあります。

所有権の取得時効

要件

①「所有の意思をもって」とは、所有者として所持・使用をすることをいいます。(これを自主占有といいます。)
例えば、建物を購入してそこに住むことは所有の意思があると言えますが、借りた建物に住むことは所有の意思があるとは言えません。
これは内心の意思とは関係なく、客観的に見たときに所有の意思があると思われる外形が必要です。
つまり、賃貸借契約で借りた建物を、買った勘違いして思っていても客観的に見ると借りている状態なので、「所有の意思がある」とは言えません。

②「平穏に、かつ、公然と」とは、無理やり奪ったりせず、かつ事実を隠したりしないということです。

③「他人の物」とありますが、自分の物であっても登記をしていないため所有権の立証が難しいケースや、第三者に対抗できないなどの場合においては取得時効を援用できるとする判例があります。
また、土地の一部や、他人の土地上の樹木など、物の一部についても時効取得することができます。

④占有を開始した時に、占有者が善意無過失であれば、10年間で取得時効が成立します。
この場合の善意無過失とは、自身に所有権があると信じ、かつ、そのように信じることに過失がないことをいいます。

占有期間については、占有開始時点と時効完成時点の2点で占有していたことを立証すれば、占有がずっと継続していたものと推定されます。

占有の承継があった場合、承継人は自分の占有のみを主張しても、前任者の占有と併せて主張してもよいとされます。
前任者の占有と併せて主張する場合は、前任者の善意・悪意や瑕疵も引き継ぎます。

効果

取得時効の効果として、占有物の所有権を原始取得新規に物権を取得することをいい、前の権利者のときに存在した制限は引き継がない)します。

取得時効と登記(判例)

取得時効と登記

①元の所有者・権利者に対しては、登記がなくても時効取得を対抗できます。

②時効が完成する前に、元の所有者から相続などによって物や権利を承継した者に対しては、登記がなくても時効取得を対抗できます。

③時効が完成した後に、元の所有者から相続などによって物や権利を承継した者に対しては、二重譲渡と同じような関係になると考えられており、登記をしなければ時効取得を対抗できません。

所有権以外の財産権の取得時効

所有権以外の財産権についても所有権と同様に、一定期間、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ公然と行使した場合、その権利を取得します。

「所有権以外の財産権」で、取得時効の認められるものとして、地上権、永小作権、地役権、質権、不動産賃借権などがあります。
取得時効の認められないものとして、留置権、先取特権、取消権、解除権などがあります。

「一定期間」とは、所有権の取得時効と同様で、善意無過失であれば10年間それ以外は20年間で取得時効が成立します。

「自己のためにする意思」とは、権利者として権利を行使することをいいます。

占有の中止等による取得時効の中断

占有者が自ら占有をやめたり、他人から奪われたりした場合、時効期間がリセットされます。
ただし、占有を奪われた時から1年以内に占有回収の訴えを提起することで時効期間の更新を免れ、占有が継続したものとされます。

この規定は所有権以外の財産権についても準用されています。

まとめ

取得時効の要件は、①一定の期間、②所有の意思をもって(自己のためにする意思をもって)、③平穏かつ公然と、④他人の物を占有・権利を行使することです。

そして効果は、物や権利を正式に取得(原始取得)することです。

第13回、民法総則「取得時効」については以上となります。

第14回では、民法総則「消滅時効」について解説します。

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