条件及び期限とは
条件・期限とは、「一定の事実」によって法律行為の効力を発生させるものです。
「一定の事実」が発生することが不確実な場合が「条件」です。
条件の具体例として、「試験に合格したら腕時計を買ってあげる」という約束などがあります。
「一定の事実」が発生することが確実な場合が「期限」です。
期限の具体例として、「来年の3月9日に腕時計を買ってあげる」という約束などがあります。
では条件と期限についてもう少し詳しくみていきましょう!
※この記事は、2020年4月改正後の民法に対応しています。
条件
条件には「停止条件」と「解除条件」があります。
停止条件とは、条件を満たした場合に法律行為の効果が発生し、条件を満たさなかった場合に法律行為の効果が発生しない条件のことをいいます。
停止条件の具体例は、先ほどと同様で「試験に合格したら腕時計を買ってあげる」という約束などがあります。
解除条件とは、条件を満たした場合に法律行為の効果が消滅し、条件を満たさなかった場合に法律行為の効果が消滅しない条件のことをいいます。
解除条件の具体例として、「腕時計を買ってあげるけど、試験に合格できなかったら返してもらう」という約束などがあります。
既成条件
既成条件とは、条件がすでに達成されている場合や、すでに達成することが不可能であることが確定している事柄を条件として設定した場合をいいます。
具体例として、「試験に合格したら腕時計を買ってあげる」という停止条件や、「腕時計を買ってあげるけど、試験に合格できなかったら返してもらう」という解除条件ですでに合格通知が届いている場合などがあります。
このように条件がすでに達成されている場合、停止条件は無条件になり、解除条件は無効となります。
反対に「試験に合格したら腕時計を買ってあげる」という停止条件や、「腕時計を買ってあげるけど、試験に合格できなかったら返してもらう」という解除条件ですでに不合格通知が届いている場合などがあります。
このように条件がすでに達成できないことが確定していた場合、停止条件は無効になり、解除条件は無条件となります。
不法条件
不法条件とは、条件の内容が法律に違反しているものをいいます。
不法条件付きの法律行為は無効となります。
不法条件の具体例として、「麻雀で買ったら100万円あげる(賭博行為)」という停止条件や、「100万円あげるけど腕時計を盗んでこなかったら返してもらう」という解除条件などがあります。
不能条件
不能条件とは、実現することが不可能な条件をいいます。
不能条件付きの法律行為は、停止条件は無効となり、解除条件は無条件となります。
不能条件の具体例として、「100点満点の試験で120点とれたら腕時計を買ってあげる」という停止条件や、「腕時計を買ってあげるけど100点満点の試験で120点とれなかったら返してもらう」という解除条件などがあります。
随意条件
随意条件とは、条件達成の成否が債務者の意思のみで決められる条件のことです。
随意条件付きの法律行為は無効となります。
随意条件の具体例として、「気が向いたら腕時計をあげる」という停止条件や、「腕時計をあげるけど気が向いたら返してもらう」という解除条件などがあります。
条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止
各当事者は、条件の成否が未定の間は、条件が達成されたときにその法律行為から生じる相手方の利益を害することができません。
例えば「試験に合格したら、今はもう手に入れることができない限定の腕時計をあげる」という停止条件付きの贈与契約をしていた場合で、試験の合否がまだわかっていないにも関わらず、その腕時計を別の人にあげてしまった場合などです。
条件の成否未定の間における権利の処分等
条件の成否が未定である間の当事者の権利義務は、処分、相続、保存、またはそのために担保することができます。
処分の例として、債権譲渡などがあります。
相続の例として、債権者や債務者の死亡により承継人が権利義務を引き継ぐことなどがあります。
保存の例として、不動産の仮登記などがあります。
条件成就の妨害等
条件が達成されると不利益がある当事者が、故意に条件の達成を妨害したときは、相手方は条件を達成したものとみなすことができます。
反対に、条件が達成されることで利益を受ける当事者が、不正な手段でその条件を達成させたときは、相手方は条件が達成されなかったものとみなすことができます。
期限
期限とは、「一定の事実」が発生することが確実な場合をいい、その事実の発生と同時に法律行為の効力が生じるもののことです。
期限には「確定期限」と「不確定期限」があります。
確定期限とは、いつ到来するかがわかっている場合のことです。
具体例として「来年の3月9日に腕時計を買ってあげる」という約束などがあります。
不確定期限とは、到来することは確実だがいつかはわからない場合のことです。
具体例として「自分が死んだら腕時計をあげる」という約束などがあります。
期限の到来の効果
法律行為の始期を決めた場合、その法律行為の履行は期限が到来するまで請求することができません。
法律行為の終期を決めた場合、その法律行為の効力は期限が到来した時に消滅します。
期限の利益及びその放棄
期限は、債務者の利益のために定めたものと推定されます。
また期限の利益は放棄することができますが、これによって相手方の利益を害することはできません。
具体例として、「3月9日に債務者Aが債権者Bからお金を100万円借りて、返済は1年後」という契約をした場合で考えてみましょう。
この場合、債務者Aは1年後まで100万円を自由に使うことができます。
これが「期限の利益」です。
この例で借金が無利息の場合は、債務者は期限の利益を放棄し、いつでも返済することができます。
しかし、利息付きの場合は、債権者にとっても期限の利益があるため、期限が到来するまでは返済することができません。
これが「期限の利益は放棄することができるが、これによって相手方の利益を害することはできない」ということです。
期限の利益の喪失
①債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
②債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
③債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき
上記①〜③に該当する場合、期限の利益を主張することができません。
まとめ
条件には、停止条件と解除条件があり、さらに既成条件、不法条件、不能条件、随意条件といった分類が規定されています。
期限には、確定期限と不確定期限があり、期限の利益とその放棄、喪失が規定されています。
第10回、民法総則「法律行為⑤」〜条件及び期限〜については以上となります。