民法総則 第14回 時効〜消滅時効〜

民法総則 第14回 消滅時効 民法

消滅時効とは

消滅時効とは、債権や所有権以外の財産権について、権利を行使しない状態が一定期間続いた場合に、その権利が消滅する制度をいいます。

具体例として、100万円を貸していた者が返済の請求をしないまま10年間経過した場合(債権の消滅時効)や、ある土地上の地上権者(他人の土地を利用する権利を有する者)がその土地を利用しないまま10年間経過した場合(所有権以外の財産権の消滅時効)などがあります。

要件

消滅時効の要件は、権利を行使しない状態が一定期間継続することです。

効果

消滅時効が成立すると、債権や財産権などの権利が消滅します。

※この記事は、2020年4月改正後の民法に対応しています。

債権等の消滅時効

①債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき

権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年間行使しないとき

債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時(客観的起算点)から20年間行使しないとき

①〜③の場合、債権は時効により消滅します。

①〜③の規定は、始期付権利や停止条件付権利の目的物を占有する第三者が占有を開始した時から取得時効が進行することを妨げません。
ただし、権利者は時効を更新するため、いつでも占有者に対し承認を求めることができます。

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については、権利を行使することができる時から20年間行使しないとき、時効によって消滅します。

定期金債権の消滅時効

定期金債権とは、定期的にお金や物を受け取ることを目的とした債権をいいます。
具体例として、賃料、年金、養育費などがあります。

定期金債権については、債権者が債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき、または、債権を行使することができる時から20年間行使しないとき、時効によって消滅します。

定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでもその債務者に対して承認書の交付を求めることができます。

判決で確定した権利の消滅時効

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年となります。

ただし、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用されません。

消滅時効の起算点

消滅時効の起算点は権利を行使できる時からです。

債権の種類毎の起算点は下記の表の通りです。

消滅時効の起算点
確定期限付き債権
例)「返済は○月○日」
期限が到来した時
不確定期限付き債権
例)「今度雨が降ったらもらう」
期限が到来した時
期限の定めのない債権
例)「この本、貸すよ」=いつでも返還請求できる
債権が成立した時
停止条件付き債権
例)「試験に受かったら腕時計をあげる」
条件が成就した時
解除条件付き債権
例)「腕時計をあげるけど試験に落ちたら返して」
債権の成立した時

返還時期の定めのない
消費貸借の債権
例)「お金貸すよ」

債権が成立して相当期間経過後
債務不履行による損害賠償請求権
例)「車を買ったけど、予定の時間に納車されないから会社に遅刻した」
元の債務の履行を請求できる時
不法行為による損害賠償請求権
例)「バイクを盗まれた」

主観的起算点:被害者が損害及び加害者を知った時

客観的起算点:不法行為時

除斥期間

除斥期間という消滅時効とよく似た制度があります。

除斥期間とは、権利を速やかに確定するため、権利の消滅期間を定めたものいいます。

消滅時効との違いは、①更新・完成猶予がなく、②援用する必要がない、③権利発生時から期間が進行する、④遡及効がない、ことが挙げられます。

条文では消滅時効と規定されていても、実際は除斥期間であることがあります。

民法第126条「取消権の期間の制限」の「行為の時から20年」という規定は除斥期間です。

まとめ

消滅時効の対象は、債権所有権以外の財産権です。

起算日には、主観的起算点(権利を行使できることを知った時)客観的起算点(権利を行使できる時)があります。

債権や財産権の種別ごとに起算点や時効年数が異なることがある点に注意してください。

第14回、民法総則「消滅時効」については以上となります。

今回で民法総則は終了です、お疲れ様でした m(_ _)m

第15回は、民法物権〜物権の全体像〜となります。

 
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