民法総則 第3回 人② 〜住所、不在者の財産管理及び失踪の宣告、同時死亡の推定〜

民法総則第3回「人」 民法
民法総則第3回「人」

人について

この記事では、民法総則に規定されている「人」について解説します。

第2回は「人」の能力に関する部分の解説をしました。
今回はその続きである住所、不在者の財産管理、失踪宣告、同時死亡の推定について解説をします。

※この記事は、2020年4月改正後の民法に対応しています。

住所

民法22条では、「各人の生活の本拠をその者の住所とする。」と規定されています。

生活の本拠その人の生活に最も関わりが深い生活の中心。

民法23条では、「住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。」と規定されています。

居所人と場所の関わりが住所ほどでないが、一時的に継続して居住する場所。

民法23条2項では、「日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。」と規定されています。

準拠法を定める法律複数の国にまたがる私人間の法律問題に、どの国の法律を適用するかを決めるもの。

民法24条では、ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。」と規定されています。

仮住所取引などで、当事者が住所の代わりとして選んだ場所をいい、自分の家でなくても構わない。

「住所」に関する判例

「住所」に関する判例として、下記の2つをご紹介します。

①学生寮に住む大学生の公職選挙法上の住所は、寮の所在地で食事の配給を受けたり住民登録している場合、実家ではなく学生寮であるとしたもの。

②公園内にテントを不法に設置している者の住民台帳基本法上の住所は、テント所在地を住所とはいえないとしたもの。

不在者の財産管理

ある人が住所や居所から長い間いなくなり、どこに行ったかもわからない場合、不在者として扱われます。
そしてその不在者の財産を誰かが管理する必要が生じるのですが、このことを「不在者の財産管理」といいます。

不在者本人が財産の管理人を指名していた場合は、その指名された人が管理人となりますが、管理人を指名していなかった場合は、利害関係人や検察官の請求により家庭裁判所が管理人を選任します。

財産管理人の職務、権限、担保提供、報酬

①家庭裁判所が財産管理人を選任した場合

・財産管理人は、不在者の財産を管理し、財産目録を作り、家庭裁判所に報告する必要があります。

・管理行為(保存行為、利用行為、改良行為)以外の行為をする場合は、家庭裁判所の許可が必要です。

・家庭裁判所は、財産管理人に対し、財産の管理や返還について担保を立てさせることができます。

・家庭裁判所は、事情を考慮し、不在者の財産から報酬を管理人に与えることができます。

②不在者本人が財産管理人を選任した場合

・不在者の生死がわからない場合、家庭裁判所は利害関係人や検察官の請求により、財産管理人を別の者に交代させることができます。

・不在者の生死がわからない場合、家庭裁判所は利害関係人や検察官の請求により、財産管理人に対し、管理する財産の目録を作成するよう命ずることができます。

・不在者が定めた権限を超える行為をする場合は、家庭裁判所の許可が必要です。

失踪の宣告

失踪宣告とは、手続きを経ることにより失踪した者を死亡したとみなす制度をいいます。

失踪宣告には、普通失踪特別失踪があります。

失踪宣告
 概要効果
普通失踪

7年間生死不明の状態が続いた場合に、利害関係人の請求により、家庭裁判所が失踪の宣告をする。

7年の期間満了時に死亡したものとみなされる。
特別失踪戦争・事故などの危難に遭遇した場合で、危難が去った後1年間生死不明の場合に、利害関係人の請求により、家庭裁判所が失踪の宣告をする。危難が去ったときに死亡したものとみなされる。

失踪宣告の取消し

失踪者が生存していた場合や、普通失踪・特別失踪で規定された死亡とみなす時と異なる時に死亡した証明があった場合は、本人か利害関係人は失踪宣告の取消しを家庭裁判所に請求しなければなりません。

失踪宣告が取り消された場合であっても、取消しの効果は失踪宣告後〜取消しまでの間に善意でした行為の効力に影響を及ぼしません。
例えば、失踪宣告後〜取消しまでの間に、不在者が生きていることを知らずに、不在者の土地を他人に売却していた場合、この売買契約は有効であるということなどがあります。

また、失踪宣告によって財産を得た者はその権利を失い、現に利益を受けている限度において財産の返還義務を負います。
現に利益を受けている限度とは、手元に残っているお金や、生活費に使った分、パソコンなど買った物が残っている分などの現存する利益のことをいい、パチンコや競馬などの娯楽で浪費した分は含まれません。

同時死亡の推定

数人の者が死亡した場合で、死亡した順番がわからないときは、同時に死亡したと推定されます。

同時死亡の推定は、死亡した順番によって相続に影響があることから規定されています。

まとめ

住所とは生活の本拠、居所とは住所がわからない場合の居住している場所、仮住所とはある行為の際に設定した住所、をいいます。

不在者の財産管理とは、行方不明になった人の財産管理に関する規定です。

失踪宣告には、普通失踪特別失踪があり、失踪宣告後に失踪者が生きていた場合は失踪宣告の取消しという制度があります。

第3回、民法総則「人」の住所、不在者の財産の管理及び失踪の宣告、同時死亡の推定については以上となります。

第4回では、民法総則「法人」について解説します。

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