民法総則 第4回 法人

民法総則 第4回  法人 民法
民法総則 第4回  法人

法人について

契約の主体として、「人」の他に「法人」があります。

「法人」とは、法律によって権利能力を認められた組織・集団のことです。

民法上での「人」と「法人」の違いは何か?ということを意識して学習することをオススメします。

※この記事は、2020年4月改正後の民法に対応しています。

法人の種類

法人には様々な種類が存在します。

例として、公法人と私法人、営利法人と非営利法人、社団法人と財団法人などです。

公法人/私法人 営利法人/非営利法人

まず、公法人/私法人、営利法人/非営利法人という分類で法人の種類を見てみましょう。

法人の種類

法人の種類

公法人に関しては行政法の記事を書くことがあればその時に解説します。

①営利法人=活動によって得た利益を社員や株主に分配する法人
営利法人の種類として、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社、外国法人があります。

②非営利法人=構成員への利益の分配をしない法人
非営利法人の種類として、公益法人、一般法人、NPO法人があります。

社団法人/財団法人

次に社団法人と財団法人について解説します。

①社団法人=人の集まりに権利能力が与えられた法人

②財団法人=財産に法人格が与えられた法人

社団法人としては、株式会社・公益社団法人・一般社団法人などがあり、財団法人としては学校法人・公益財団法人・一般財団法人などがあります。

法人の設立等

民法第33条=「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。」
その他の法律とは、会社法(営利法人)、公益法人認定法(公益法人)、社会福祉法(社会福祉法人)、一般法人法(一般法人)、特定非営利活動促進法(NPO法人)、弁護士法(弁護士法人)などです。

民法第33条2項=「学術、技芸、慈善、祭、宗教その他の公益を目的とする法、②営利事業を営むことを目的とする法人、③その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。」

民法33条2項を解説すると、下記のようになります。

①学術、技芸、慈善、祭、宗教その他の公益を目的とする法人=公益法人公益法人認定法の定めるところによる

②営利事業を営むことを目的とする法人=営利法人会社法の定めるところによる

③その他の法人(公益でも営利でもない法人)=一般法人一般法人法NPO法人特定非営利活動促進法の定めるところによる

つまり、民法で法人の一般的な規定を置き、詳細な手続きに関してはそれぞれ法人の種類毎に定められた法律に従って設立、組織、運営、管理を行う必要があるということです。

法人の能力

民法第34条=「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」

つまり法人の能力は、目的の範囲内で権利・義務を負うということになります。

では、判例を元にどこまでが目的の範囲内かを考えてみましょう。

「目的の範囲内」に関する判例

①営利法人に関する判例
目的の範囲内かどうかは、「定款に記載された目的を遂行するうえで必要な行為であればすべて含まれる」とし、「定款に記載された目的遂行に必要な行為であるかは、現実に必要かどうかでなく、客観的・抽象的に判断すべき」とした判例があります。
つまり営利法人に関しては、目的の範囲の幅が広く、ほぼ制限がないということです。

・目的の範囲内とされた判例
(1)会社が政党への政治資金を寄付する行為
(2)会社が他人の債務を引き受ける行為

②非営利法人に関する判例
目的の範囲内かどうかは、「その行為が活動に必要な行為であるか」を基準とするとした判例があります。

・目的の範囲内とされた判例
(1)司法書士会が震災復興支援金を寄付する行為
(2)農業協同組合が経済的な基礎を確立する目的での組合員でない者へ資金を貸す行為

・目的の範囲外とされた判例
(1)税理士会が政党への政治資金を寄付する行為
(2)農業協同組合と組合員以外の者の双方が組合員以外に資金を貸してはならないことを知りつつ、貸し付ける行為

外国法人

外国法人とは、外国の法律に基づいて設立した法人のことをいいます。

外国法人として成立が認められた場合、日本国内の法人と同一の権利・義務を有します。

まとめ

権利能力の主体として、「人」「法人」があり、法人の種類には、営利法人非営利法人といった分類に始まり、そこからさらに株式会社やNPO法人などに細分化されます。

法人の能力として、目的の範囲内において権利能力を有します。

第4回、民法総則「法人」については以上となります。

第5回では、民法総則「物」について解説します。

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