物について
「物」は権利の客体であり、「人」や「法人」は権利の主体です。
これを言い換えると、権利能力を有する「人」や「法人」の権利行使の対象となるのが「物」ということです。
この物に対する権利のことを物権といいます。
※この記事は、2020年4月改正後の民法に対応しています。
物の定義
民法上で「物」とは有体物のことをいいます。
有体物とは、固体・液体・気体のことです。
有体物の対義語は無体物です。
無体物には電気、熱、音、光などがあります。
無体物は権利行使の対象ではないのかというと、そうではなく無体物であっても所有権などの物権が成立することがあります。
例えば、自身の所有する太陽光パネルで得た電気を他人に売る事ができるのは、自身が電気に対して所有権という物権を持っているからです。
つまり「物」が権利行使の対象になるか?ということを考える場合に、有体物か無体物か、ということにこだわる意味はあまりないように思います。
民法第85条では「この法律において「物」とは、有体物をいう。」とありますが、無体物であっても「物」に該当することもあるということを理解しておいてください。
物の要件
それでは「物」の要件を確認してみましょう。
物の要件 |
①△有体物であること |
②現実に支配できること |
③特定できること |
④独立していること |
この4つの要件を満たさない場合は「物」にあたらないということです。
ただし、先ほど説明した通り①の「有体物であること」に関しては、無体物であっても「物」に該当するケースがあることに注意してください。
物の種類
民法上の物の種類には「不動産と動産」、「主物と従物」、「天然果実と法定果実」があります。
1.不動産と動産
不動産=土地と、土地に固定されている物
不動産の具体例として、土地、建物、線路、橋などがあります。
動産=不動産以外の物
動産の具体例として、テレビ、パソコン、自動車、商品券などがあります。
2.主物と従物
主物と従物とは、別々の独立した物のうち、一緒に使用することが想定される物のことです。
具体例として、刀(主物)と鞘(従物)、家(主物)と畳(従物)、金庫(主物)と鍵(従物)などがあります。
従物は主物が処分される場合、主物と一緒に処分されます。
つまり、刀が売却された場合は鞘も一緒に売却されるということです。
3.天然果実と法定果実
天然果実=物の使用方法に従って使用することで得られる収益
具体例として、牛からとれる牛乳、鉱山でとれる鉱物、畑からとれる野菜などがあります。
法定果実=物を使用した際の対価として得られる収益
具体例として、アパートの賃料、お金を貸した場合の利息などがあります。
天然果実は、果実が元の物から分離するときに収取する権利を持っている者に帰属します。
法定果実は、収取する権利を持っていた期間を日割りで計算します。
まとめ
権利能力を行使する=権利の主体として「人」や「法人」があり、「人」や「法人」が権利を行使する対象=権利の客体として「物」があります。
「物」の種類には不動産と動産があり、その中で主物と従物という関係性を持つ物があり、収益を生む物は天然果実と法定果実があるということです。
民法第2編である「物権」を学習すると、「物」の規定の意味が理解しやすくなると思います。
第5回、民法総則「物」については以上となります。