民法総則 第9回 法律行為④ 〜無効及び取消し〜

民法総則 第9回 法律行為④ 民法

無効及び取消しとは

無効・取消しは法律行為の一種です。

無効とは、法律行為の効力が生じないということです。

取消しとは、法律行為の効力が取消されるまでは有効ですが、取消されると法律行為の当初にさかのぼって無効になるということです。

無効になる法律行為の具体例として、意思能力を欠く法律行為(幼児や泥酔者がした契約など)、心裡留保による契約で相手方が悪意・有過失の場合、虚偽表示、愛人契約や賭博などの公序良俗に反する行為などがあります。

取消しできる法律行為の具体例として、制限行為能力者の行った法律行為(未成年者が保護者の同意なく借金をした場合や、被保佐人が保佐人の同意なく不動産の購入をした場合など)や、瑕疵ある意思表示(錯誤、詐欺、強迫による契約など)があります。

※この記事は、2020年4月改正後の民法に対応しています。

無効

無効な法律行為は、最初から効力が生じなかったものとみなされます。

無効であるということは、誰が主張してもよいとされています。
また、主張期間の制限もありません。

無効な行為は、原則として追認しても効力を生じないのですが、民法第119条では「当事者が無効であることを知って追認したときは、新たな行為をしたものとみなす」と規定されています。
例えば、心裡留保で相手方が悪意の場合の契約は無効ですが、嘘や冗談を言った本人がこの契約が無効であると知りながら追認した場合などがこれにあたります。

取消し

取消しできる法律行為は、取消されるまでは有効です。
取消された後に、法律行為の当時にさかのぼって無効となります。
契約により、物や金銭などの引き渡しをしていた場合は不当利得(法律上正当な理由なく他人の財産を得て、その他人に損害を与えていること)として返還する義務が生じます。

取消しを主張できるのは、① 制限行為能力者・瑕疵ある意思表示をした者(表意者本人)、② ①の代理人、③ ①の承継人(相続人など本人の契約上の地位を引き継ぐ者)です。

取消しは、追認することができる時から5年間、法律行為の時から20年間経過することで時効により消滅します。

取消しできる行為を追認した場合、法律行為の当初から有効であったとみなされ、以後は取り消すことができなくなります。
追認の方法は、相手方に対する意思表示によって行います。

追認の要件として、①取消しの原因となった状況が消滅した後(制限行為能力者であれば能力者となった後、詐欺による意思表示を行った者であれば、騙されて契約をしたという事実を知った後)、②取消しできることを知った後、の2つを満たす必要があります。

ただし、法定代理人、制限行為能力者の保佐人・補助人が追認する場合や制限行為能力者本人が法定代理人、保佐人、補助人の同意を得て追認する場合は、①・②の要件を満たす必要はありません。
成年被後見人は自身の行為の結果を認識できない可能性が高く、同意を与えてもあまり意味がないため、成年後見人は同意権がありません。
そのため、成年被後見人は成年後見人の同意を得ていても追認することができません。

法定追認

法定追認とは、契約を有効に成立させる意思があると考えられるような一定の事実があった場合に、追認したものとみなすことをいいます。

法定追認には、①全部または一部の履行、②履行の請求、③更改、④担保の供与、⑤取り消すことができる行為によって取得した権利の全部または一部の譲渡、⑥強制執行の6つがあります。

まとめ

無効と取消し
 無効取消し
効果法律行為の効力が生じない法律行為の効力が取消されるまでは有効だが、取消されると法律行為の当初にさかのぼって無効になる
主張権者誰でも

① 制限行為能力者・瑕疵ある意思表示をした者(表意者本人)

② ①の代理人

③ ①の承継人(相続人など本人の契約上の地位を引き継ぐ者)

主張できるケース意思能力を欠く法律行為、公序良俗違反など

制限行為能力者の行った法律行為、瑕疵ある意思表示(錯誤、詐欺、強迫)など

主張期間いつでも追認することができる時から5年間、法律行為の時から20年間

第9回、民法総則「法律行為④」〜無効及び取消し〜については以上となります。

第10回では、民法総則「法律行為⑤」〜条件及び期限〜について解説します。

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