民法の条文を解説

民法 条文解説 民法
民法 条文解説

はじめに

このページでは民法の条文について解説します。

民法初学者の方や、民法の学習を一通り終えた後に復習したい方にオススメです。

※この記事は、2020年4月改正後の民法に対応しています。

※この記事は、未完成です。続きは随時更新予定ですので、もう少々お待ち下さい。

民法の全体像

民法は全5編、1,050条の条文で構成されています。
民法の全体像は下記の図の通りです。

民法の全体像

民法の全体像

財産法とは、その名の通り財産関係を規律するものをいいます。

家族法とは、夫婦・親子・親族の身分関係や相続に関することを規律するものをいいます。

第1編 総則

民法の総則の規定は、民法全体に適用されます。
また、民法だけではなく、他の商法・会社法・知的財産法などの全ての私法(私人間の権利・義務を規律する法)にも、この総則の規定が適用されます。

総則の内容は以下の表の通りです。

第1編 総則
条文解説
第1章 通則 (詳しい解説はコチラ)
第1条
基本原則

1項
私権(財産権や相続権などの私法上の権利)公共の福祉(社会全体の利益)に適合しなければならない。

2項
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。=信義誠実の原則(お互いに相手方の信頼を裏切らないよう誠意をもって行動すべき、という原則)

3項
権利の濫用はこれを許さない。=権利濫用の禁止(一見正当な権利の行使に見えても、実際にはその権利の行使が社会的に認められる限度を超えたものを禁止する、という原則)

第2条
解釈の基準
この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。
第2章 人 (詳しい解説はコチラ)
第1節 権利能力 (詳しい解説はコチラ)
第3条

権利能力(私法上の権利・義務の主体となることができる資格)

1項
私権の享有(権利や能力を生まれつきもっていること)は、出生に始まる。

2項
外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

第2節 意思能力 (詳しい解説はコチラ)
第3条の2法律行為人の意思表示に基づき、権利義務の発生、変更、消滅などの法的効果を発生させる行為)の当事者が意思表示をした時に意思能力(自分の行為の結果を理解できる能力)を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
第3節 行為能力 (詳しい解説はコチラ)
第4条
成年
年齢20歳をもって、成年とする。
第5条
未成年者の法律行為
1項
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為(負担のない贈与や、借金の免除など)については、この限りでない。
 
2項
前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
 
3項
第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産(学費、パソコン代など)は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。
目的を定めないで処分を許した財産(お小遣いなど)を処分するときも、同様とする。
第6条
未成年者の営業の許可

1項
一種又は数種の営業「営業」とは利益を得る目的で、同種の行為を継続的、反復的に行うことをいい、他人に雇用される場合は含まない)を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

2項
前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第4編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

第7条
後見開始の審判

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判(家庭裁判所が、親族や後見人等の請求により、精神上の障害が原因で判断能力を欠く人常況の人に対して行う審判)をすることができる。

第8条
成年被後見人及び成年後見人

後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人(成年被後見人の保護者)を付する。

 第9条
成年被後見人の法律行為

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

第10条
後見開始の審判の取消し

第7条に規定する原因(=後見開始の審判の原因)が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。

第11条
保佐開始の審判

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因(=後見開始の審判の原因)がある者については、この限りでない。

第12条
被保佐人及び保佐人

保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人(被保佐人の保護者)を付する。

第13条
保佐人の同意を要する行為等

1項
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。
ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
①号 元本を領収し、又は利用すること。
②号 借財又は保証をすること。
③号 不動産その他重要な財産(株式・著作権等)に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
④号 訴訟行為をすること。
⑤号 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意(紛争解決を第三者の仲裁にゆだねて、裁判所へ訴訟提起をしないことの合意)をいう。)をすること。
⑥号 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
⑦号 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
⑧号 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
⑨号 第602条(短期賃貸借)に定める期間を超える賃貸借をすること。
⑩号 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

2項
家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

3項
保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
 
4項
保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

第14条
保佐開始の審判等の取消し
1項
第11条本文に規定する原因
(=保佐開始の審判の原因)が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。
 
2項
家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第2項の審判(=保佐人の同意を得なければならない旨の審判)の全部又は一部を取り消すことができる。

保佐開始の審判の原因が消滅したときは、家庭裁判所は、親族や法定代理人等の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。

第15条
補助開始の審判
1項
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。
ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者(後見・保佐開始の審判の原因のある者)については、この限りでない。

2項
本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

3項
補助開始の審判は、第17条第1項の審判(補助人の同意を要する旨の審判等)又は第876条の9第1項の審判(補助人に代理権を付与する旨の審判)とともにしなければならない。
第16条
被補助人及び補助人

補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人(被補助人の保護者)を付する。

第17条
補助人の同意を要する旨の審判等

1項
家庭裁判所は、第15条第1項本文(補助開始の審判)に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。
ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為(保佐人の同意を要する行為等)の一部に限る。

2項
本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。

3項
補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4項
補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず、被補助人が同意しないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により補助人の同意に代わる許可を与えることができる。

第18条
補助開始の審判等の取消し
1項
第15条第1項本文(補助開始の審判)に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。
2項
家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第1項の審判(補助人の同意を要する旨の審判等)の全部又は一部を取り消すことができる。
3項
前条第1項の審判(補助人の同意を要する旨の審判等)及び第876条の9第1項の審判(補助人に代理権を付与する旨の審判)をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。

補助開始の審判の原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人や親族、法定代理人等の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。

第19条
審判相互の関係
1項
後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。
2項
前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。
第20条
制限行為能力者の相手方の催告権
1項
制限行為能力者(未成年、成年被後見人、非保佐人、被補助人)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、1ヶ月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認(過去に行った取り消すことのできる契約などを有効と認めること)するかどうかを確答すべき旨の催告(催促)をすることができる。
この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

2項
制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内(1ヶ月以上の期間を定めること)に確答を発しないときも、同項後段と同様(追認したものとみなす)とする。
3項
特別の方式を要する行為(追認に後見監督人の同意が必要な場合等)については、前2項の期間内(1ヶ月以上の期間を定めること)にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
4項
制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条第1項の審判(補助人の同意を要する旨の審判等)を受けた被補助人に対しては、第1項の期間内(1ヶ月以上の期間を定めること)にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。
この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
第21条
制限行為能力者の詐術
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術(人をだますこと)を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
第4節 住所 (詳しい解説はコチラ)
第22条
住所
各人の生活の本拠(その人の生活に最も関わりが深い生活の中心)をその者の住所とする。
第23条
居所

1項
住所が知れない場合には、居所(人と場所の関わりが住所ほどでないが、一時的に継続して居住する場所)を住所とみなす。

2項
日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。
ただし、準拠法国際私法によって、ある法律関係を規律するものとして適用される法)を定める法律に従いその者の住所地法(当事者の住所の存在する国の法律)によるべき場合は、この限りではない。

※国際私法複数の国にまたがる私人間の法律問題に関する法)

第24条
仮住所
ある行為について仮住所(取引などで、当事者が住所の代わりとして選んだ場所=会社の事務所などをいい、自分の家でなくても構わない)を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす
第5節 不在者の財産の管理及び失踪の宣告 (詳しい解説はコチラ)
第25条
不在者の財産の管理
1項
従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2項
前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない
第26条
管理人の改任
不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任(別の者に交代させること)することができる。
第27条
管理人の職務
1項
前2条の規定
(不在者の財産の管理&管理人の改任)により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。
この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。

2項
不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。

3項
前2項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

第28条
管理人の権限
管理人は、第103条に規定する権限(権限の定めのない代理人の権限=保存・利用・改良行為)を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。
不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
第29条
管理人の担保提供及び報酬

1項
家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。

2項
家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

第30条
失踪の宣告

1項(普通失踪)
不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。

2項(特別失踪)
戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも、前項と同様とする。

第31条
失踪の宣告の効力
前条第1項の規定(普通失踪)により失踪の宣告を受けた者は同項の期間(7年間)が満了した時に、同条第2項の規定(特別失踪)により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
第32条
失踪の宣告の取消し
1項
失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。
この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2項
失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。
ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
第6節 同時死亡の推定 (詳しい解説はコチラ)
第32条の2数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
第3章 法人 (詳しい解説はコチラ)
第33条
法人の設立等

1項
法人は、この法律(民法)その他の法律(会社法、一般法人法など)の規定によらなければ、成立しない。

2項
学術、技芸、慈善、祭、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。

第34条
法人の能力
法人は、法令の規定に従い、定款(会社の規則)その他の基本約款(定型化された契約条項)で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
第35条
外国法人

1項
外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。
ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。

2項
前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。
ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。

第36条
登記
法人及び外国法人は、この法律(民法)その他の法令(会社法、一般法人法など)の定めるところにより、登記をするものとする。
第37条
外国法人の登記

1項
外国法人(第35条第1項ただし書に規定する外国法人(認許された外国法人)に限る。以下この条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、3週間以内に、その事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。

①号 外国法人の設立の準拠法
②号 目的
③号 名称
④号 事務所の所在場所
⑤号 存続期間を定めたときは、その定め
⑥号 代表者の氏名及び住所
 
2項
前項各号に掲げる事項(①〜⑥号)に変更を生じたときは、3週間以内に、変更の登記をしなければならない。
この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。

3項
代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記をしなければならない。
この場合においては、前項後段の規定を準用する。

4項
前2項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、その通知が到達した日から起算する。

5項
外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。

6項
外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては3週間以内に移転の登記をし、新所在地においては4週間以内に第1項各号(①〜⑥号)に掲げる事項を登記しなければならない。

7項
同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。

8項
外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、50万円以下の過料に処する。
 
第38条

第84条
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第4章 物 (詳しい解説はコチラ)
第85条
定義
この法律において「物」とは、有体物(固体・液体・気体、土地、建物、電気、熱など)をいう。
第86条
不動産及び動産

1項
土地及びその定着物は、不動産とする。

2項
不動産以外の物は、すべて動産とする。

第87条
主物及び従物

1項
物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。

2項
従物は、主物の処分に従う。

主物と従物の具体例
主物=刀、従物=鞘
主物=建物、従物=畳 など

第88条
天然果実及び法定果実

1項
物の用法に従い収取する産出物を天然果実(野菜、果物、牛乳、石炭、卵など)とする。

2項
物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実(家賃、利息など)とする。

第89条
果実の帰属

1項
天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。

2項
法定果実は、これを収集する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。

第5章 法律行為 (詳しい解説はコチラ)
第1節 総則 (詳しい解説はコチラ)
第90条
公序良俗
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為(賭博や愛人契約など)は、無効とする。
第91条
任意規定と異なる意思表示

法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思表示をしたときは、その意思に従う。

※任意規定(当事者間で法令の規定と異なる取り決めをしなかった場合にだけ適用される規定)

第92条
任意規定と異なる慣習

法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

慣習(社会生活上繰り返し行われる事柄で、一般市民が共通のルールとして認識しているもの)

第2節 意思表示 (詳しい解説はコチラ)
第93条
心裡留保
1項
意思表示(一定の法律効果の発生を欲する意思を外部に表示すること)は、表意者がその真意ではないことを知ってしたとき(ウソや冗談)であっても、そのためにその効力を妨げられない(有効)
ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

2項
前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
第94条
虚偽表示
1項
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

2項
前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
第95条
錯誤
1項
意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

①号 意思表示に対応する意思を欠く錯誤(10,000円を1,000円と書き間違えるなど、意思と表示が一致しないこと)
②号 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(小型二輪免許しかないので125CCクラスのバイクを買うつもりだったが、勘違いして普通二輪免許の必要な250CCクラスのバイクを買ってしまったなど、動機と意思表示に不一致があること)

2項
前項第②号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3項
錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
①号 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
②号 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4項
第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
第96条
詐欺又は強迫
1項
詐欺(人を騙して勘違いさせ、それによって意思表示させること)又は強迫(人をおどして、恐怖心によって意思表示させること)による意思表示は、取り消すことができる。

2項
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3項
前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
第97条
意思表示の効力発生時期等

1項
意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

2項
相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

3項
意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

第98条
公示による意思表示

1項
意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示(広く一般に知らせる方法)の方法によってすることができる。

2項
前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報(政府が一般に知らせるために発行する国の機関紙)に少なくとも1回掲載して行う。
ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。

3項
公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。
ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。

4項
公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。

5項
裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

第98条の2
意思表示の受領能力

意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。
ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。
①号 相手方の法定代理人
②号 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方

第3節 代理 (詳しい解説はコチラ)
第99条
代理行為の要件及び効果

1項
代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

2項
前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

第100条
本人のためにすることを示さない意思表示
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定(本人に対して直接にその効果が生ずる)を準用する。
第101条
代理行為の瑕疵
1項
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

2項
相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

3項
特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。
本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
第102条
代理人の行為能力
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。
ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
第103条
権限の定めのない代理人の権限
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。

①号 保存行為(現状を維持するための行為)
②号 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用(性質を変えない範囲で収益を図る行為)又は改良(性質を変えない範囲で価値を増加させる行為)を目的とする行為
第104条
任意代理人による復代理人の選任
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
第105条
法定代理人による復代理人の選任
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。
この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。
第106条
復代理人の権限等
1項
復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
2項
復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。
第107条
代理権の濫用
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為(無権代理)とみなす。
第108条
自己契約及び双方代理等
1項
同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為(無権代理)とみなす。
ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

2項
前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為(無権代理)とみなす。
ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
第109条
代理権授与の表示による表見代理等
1項
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。
ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

2項
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。
第110条
権限外の行為の表見代理
前条第1項本文の規定(代理権授与の表示による表見代理等)は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
第111条
代理権の消滅事由
1項
代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。

①号 本人の死亡
②号 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
2項
委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。
第112条
代理権消滅後の表見代理等
1項
他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。
ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
2項
他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う
第113条
無権代理
1項
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2項
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
第114条
無権代理の相手方の催告権
前条の場合(無権代理)において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。
この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
第115条
無権代理の相手方の取消権
代理権を有しない者(無権代理人)がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。
ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
第116条
無権代理行為の追認
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。
ただし、第三者の権利を害することはできない。
第117条
無権代理人の責任
1項
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

2項
前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
①号 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないこと(無権代理)を相手方が知っていたとき。
②号 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないこと(無権代理)を相手方が過失によって知らなかったとき。
ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたとき(悪意の無権代理人)は、この限りでない。
③号 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき(制限行為能力者である無権代理人)
第118条
単独行為の無権代理
単独行為(取消しや遺言など、一方的な意思表示で完結する行為)については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第103条から前条までの規定(無権代理に関する規定)を準用する。
代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。
第4節 無効及び取消し (詳しい解説はコチラ)
第119条
無効な行為の追認
無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。
ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。(例:泥酔状態で不動産の売買契約をしてしまい、その後意思能力を回復して売買契約が無効であると認識したが、そのまま売買してもいいと思い追認した場合、泥酔状態の時ではなく、意思能力を回復して追認した時点で新たに売買契約をしたとみなす。)
第120条
取消権者

1項
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人(相続人など本人の地位を引き継ぐ者)若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

2項
錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵かしある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

第121条
取消しの効果
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
第121条の2
原状回復の義務
1項
無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者(例:麻雀などの賭博行為で勝った分の金銭を受け取った者など)は、相手方を原状に復させる義務を負う。

2項
前項の規定にかかわらず、無効な無償行為(例:冗談で贈与するといったが相手方が冗談であることを知っていた契約=心裡留保による相手方悪意の契約、など)に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定(取り消された)により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

3項
第1項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者(幼児や泥酔者など)は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
第122条
取り消すことができる行為の追認
取り消すことができる行為は、第120条に規定する者(取消権者)が追認したときは、以後、取り消すことができない。
第123条
取消し及び追認の方法
取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
第124条
追認の要件
1項
取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅(詐欺や錯誤による取消しであれば勘違いしていたことを認識した時、強迫による取消しであれば、畏怖が生じなくなった時)し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。

2項
次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
①号 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
②号 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
第125条
法定追認
追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。
ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

①号 全部又は一部の履行
②号 履行の請求
③号 更改(債務の内容を変更して新しい債務を発生させること、変更前の債務は消滅する。)
④号 担保の供与(例:不動産に抵当権を設定する、動産に質権を設定する、など)
⑤号 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡(詐欺にあって購入した壺を第三者に売った場合や、強迫によって買わされた土地の一部を第三者にあげたなど)
⑥号 強制執行(債権を実行するために、確定判決などを経て国家権力により強制的に実現する手続き)
第126条
取消権の期間の制限
取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。(消滅時効)
行為の時から20年を経過したとき(除斥期間)も、同様とする。
第5節 条件及び期限 (詳しい解説はコチラ)
第127条
条件が成就した場合の効果
1項
停止条件付法律行為(「試験に合格したら腕時計をあげる」など)は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2項
解除条件付法律行為(「腕時計をあげるけど試験が不合格だったら返してもらう」など)は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3項
当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。
第128条
条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止
条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。(試験に合格したら腕時計をあげるという約束の場合、その腕時計を別の人にあげてしまうことはできない、など)
第129条
条件の成否未定の間における権利の処分等
条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。(試験に合格したら腕時計をあげるという約束の場合、腕時計をもらうという債権や、あげるという債務を有しているが、その「債権・債務=権利義務」を処分・相続・保存又は担保に供することができるということ)
第130条
条件の成就の妨害等
1項
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたとき(試験に合格したら腕時計をあげるという約束の場合、腕時計をあげる側の者が試験に合格できないよう妨害すること、など)は、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

2項
条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたとき(試験に合格したら腕時計をあげるという約束の場合、腕時計をもらう側の者が、試験は本当は不合格だったが合格したとウソをつくこと、など)は、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。
第131条
既成条件
1項
条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。

2項
条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
3項
前2項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第128条及び第129条の規定(条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止&条件の成否未定の間における権利の処分等)を準用する。
第132条
不法条件
不法な条件を付した法律行為は、無効とする。
不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。
第133条
不能条件
1項
不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
2項
不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする
第134条
随意条件
停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るとき(気が向いたら腕時計をあげる、など)は、無効とする。
第135条
期限の到来の効果
1項
法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。

2項
法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。
第136条
期限の利益及びその放棄
1項
期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2項
期限の利益(無利息でお金を借りていた場合の返済期日など)は、放棄することができる。
ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。(利息付きでお金を貸していて返済日が決まっている場合など)
第137条
期限の利益の喪失
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。

①号 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
②号 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
③号 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
第6章 期間の計算 (詳しい解説はコチラ)
第138条
期間の計算の通則
期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。
第139条
期間の起算
時間によって期間を定めたとき(時・分・秒単位)は、その期間は、即時から起算する。
第140条日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。(「1月1日から3日間」=1月1日を除き、1月2日、3日、4日の3日間)
ただし、その期間が午前0時から始まるときは、この限りでない。(上記の例では、1月1日、2日、3日の3日間となる)
第141条
期間の満了
前条の場合には、期間は、その末日の終了(午後11時59分59秒)をもって満了する。
第142条期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。
第143条
暦による期間の計算
1項
週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。

2項
週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。(例:2021年8月30日から1年間=2022年8月29日まで)
ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。(例:1月31日から1ヶ月間=2月28日まで)
第7章 時効 (詳しい解説はコチラ)
第1節 総則 (詳しい解説はコチラ)
第144条
時効の効力
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
第145条
時効の援用
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
第146条
時効の利益の放棄
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
第147条
裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新
1項(完成猶予)
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

①号 裁判上の請求
②号 支払督促
③号 民事訴訟法第275条第1項の和解又は民事調停法(昭和26年法律第222号)若しくは家事事件手続法(平成23年法律第52号)による調停
④号 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2項(更新)
前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
第148条
強制執行等による時効の完成猶予及び更新
1項(完成猶予)
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

①号 強制執行
②号 担保権の実行
③号 民事執行法(昭和54年法律第4号)第195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
④号 民事執行法第196条に規定する財産開示手続又は同法第204条に規定する第三者からの情報取得手続
2項(更新)
前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。
第149条
仮差押え等による時効の完成猶予
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

①号 仮差押え
②号 仮処分
第150条
催告による時効の完成猶予
1項
催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2項
催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
第151条
協議を行う旨の合意による時効の完成猶予
1項
権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。

①号 その合意があった時から1年を経過した時
②号 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
③号 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6箇月を経過した時
2項
前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。
ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
3項 
催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第1項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4項
第1項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前3項の規定を適用する。
5項
前項の規定は、第1項第3号の通知について準用する。
第152条
承認による時効の更新
1項
時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2項
前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
第153条
時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲
1項
第147条又は第148条の規定(裁判上の請求等・強制執行等)による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
2項 
第149条から第151条までの規定(仮差押え等・催告・協議を行う旨の合意)による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
3項
前条の規定(承認)による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
第154条第148条第1項各号又は第149条各号に掲げる事由(強制執行等・仮差押え等)に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、第148条又は第149条の規定(強制執行等・仮差押え等)による時効の完成猶予又は更新の効力を生じない。
第155条

第157条
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第158条
未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予
1項
時効の期間の満了前6箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2項
未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。
第159条
夫婦間の権利の時効の完成猶予
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利(不貞行為があった場合の損害賠償請求権や、夫婦の一方が他の一方に対してお金の貸していた場合の債権など)については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
第160条
相続財産に関する時効の完成猶予
相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
第161条
天災等による時効の完成猶予
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第147条第1項各号又は第148条第1項各号に掲げる事由(裁判上の請求・強制執行)に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から3箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
第2節 取得時効 (詳しい解説はコチラ)
第162条
所有権の取得時効
1項
20年間、所有の意思をもって(自主占有)平穏に、かつ、公然と(脅したり隠したりせず)他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2項
10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
第163条
所有権以外の財産権の取得時効
所有権以外の財産権(地上権、永小作権、地役権、質権、不動産賃借権など)、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。
第164条
占有の中止等による取得時効の中断
第162条の規定(所有権の取得時効)による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によってその占有を奪われたときは、中断する。
第165条前条の規定は、第163条(所有権以外の財産権の取得時効)の場合について準用する。
第3節 消滅時効 (詳しい解説はコチラ)
第166条
債権等の消滅時効
1項
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

①号 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
②号 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2項
債権又は所有権以外の財産権(地上権、永小作権、地役権など)は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3項
前2項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。
ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
第167条
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第2号の規定(債権の消滅時効)の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。
第168条
定期金債権の消滅時効
1項
定期金の債権(賃料、年金、養育費など)、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

①号 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。
②号 前号に規定する各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。
2項
定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。
第169条
判決で確定した権利の消滅時効
1項
確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。
2項
前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
第170条

第174条
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