著作権法 第1章 総則について
この記事では、著作権法 第1章 総則の条文の規定について解説します。
第1章総則では、著作権法の目的・定義や、保護を受ける著作物等に関することなどの著作権法全体に適用されるものが規定されています。
著作権法を理解する上で基礎となる部分ですので、はじめに学習しておくことをオススメします。
著作権法の目的 (著作権法第1条「目的」)
著作権法第1条「目的」では、
「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」
と規定されています。
これを言い換えると、
「著作権法では、①著作権(著作物に関する権利)、②著作隣接権(実演・レコード・放送・有線放送に関する権利)を定めて、著作者の権利を保護しつつ、公正な利用をすることで文化の発展に役立てることを目的とする。」
ということです。
著作権法の「目的」は、これは著作権法に違反しているか?ということを考える場合に、原点となるものです。
また総則や通則とは、全体に共通するルールという意味ですので、この「目的」は著作権法全体に対して適用されます。
著作物、著作者とは (著作権法第2条「定義」)
著作物
著作物=「①思想又は感情を②創作的に表現したものであつて、③文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」
「①思想又は感情とは、人間の精神活動全般を指し、②創作的に表現したものとは、厳格な意味での独創性があるとか他に類例がないとかが要求されているわけではなく、「思想又は感情」の外部的表現に著作者の個性が何らかの形で現われていれば足り、③文芸、学術、美術 又は音楽の範囲に属するというのも、知的、文化的精神活動の所産全般を指すものと解するのが相当である。」
とした判例があります。
著作者
著作者=著作物を創作する者
著作者に関する判例として、「SMAPインタビュー記事事件」があります。
この事件では、インタビュー記事の著作者が誰か?ということが争点となりました。
結論として、本件においては執筆者が著作者であり、口述者は著作者ではないとされました。
理由として、
「インタビュー等の口述を基に作成された雑誌記事等の文書については、文書作成への関与の態様及び程度により、
①口述者が、文書の執筆者とともに共同著作者となる場合
②当該文書を二次的著作物とする原著作物の著作者であると解すべき場合
③文書作成のための素材を提供したにすぎず著作者とはいえない場合
などがあると考えられる。
すなわち、口述した言葉を逐語的にそのまま文書化した場合や、口述内容に基づいて作成された原稿を口述者が閲読し表現を加除訂正して文書を完成させた場合など、文書としての表現の作成に口述者が創作的に関与したといえる場合には、口述者が単独又は文書執筆者と共同で当該文書の著作者になるものと解すべきである。
これに対し、あらかじめ用意された質問に口述者が回答した内容が執筆者側の企画、方針等に応じて取捨選択され、執筆者により更に表現上の加除訂正等が加えられて文書が作成され、その過程において口述者が手を加えていない場合には、口述者は、文書表現の作成に創作的に関与したということはできず、単に文書作成のための素材を提供したにとどまるものであるから、文書の著作者とはならないと解すべきである。」
としています。
その他の著作権法における用語の定義
著作権法における用語の定義 | |
用語 | 定義 |
実演 | 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること (これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む) |
実演家 | 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者 |
レコード | 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの |
レコード製作者 | レコードに固定されている音を最初に固定した者 |
商業用レコード | 市販の目的をもって製作されるレコードの複製物 |
公衆送信 | 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと (電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く)を除く) |
放送 | 公衆送信のうち、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信 |
放送事業者 | 放送を業として行う者 |
有線放送 | 公衆送信のうち、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信 |
有線放送事業者 | 有線放送を業として行う者 |
自動公衆送信 | 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの (放送又は有線放送に該当するものを除く) |
送信可能化 | 次の①、②に掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすること ① 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置((公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分)=(公衆送信用記録媒体)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること ② その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう)を行うこと |
映画製作者 | 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者 |
プログラム | 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの |
データベース | 論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの |
二次的著作物 | 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物 |
共同著作物 | 二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの |
録音 | 音を物に固定し、又はその固定物を増製すること |
録画 | 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製すること |
複製 | 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次の①、②に掲げる行為を含む ① 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること ② 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること |
上演 | 演奏(歌唱を含む)以外の方法により著作物を演ずること |
上映 | 著作物(公衆送信されるものを除く)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むもの |
口述 | 朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く) |
頒布 | 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあっては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むもの |
技術的保護手段 | 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法)により、著作権等(著作権、著作者人格権、出版権、実演家人格権、著作隣接権)を侵害する行為の防止又は抑止をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く)であって、著作物等(著作物、実演、レコード、放送又は有線放送)の利用に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるもの |
技術的利用制限手段 | 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあっては、当該著作物を電子計算機において実行する行為を含む。)を制限する手段 (著作権者等(著作権者、出版権者又は著作隣接権者)の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であって、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるもの |
権利管理情報 | 著作権等(著作権、著作者人格権、出版権、著作隣接権)に関する情報であって、①〜③までのいずれかに該当するもののうち、電磁的方法により著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録され、又は送信されるもの (著作物等の利用状況の把握、著作物等の利用の許諾に係る事務処理その他の著作権等の管理(電子計算機によるものに限る)に用いられていないものを除く) ① 著作物等、著作権等を有する者その他政令で定める事項を特定する情報 ② 著作物等の利用を許諾する場合の利用方法及び条件に関する情報 ③ 他の情報と照合することによりイ又はロに掲げる事項を特定することができることとなる情報 |
国内 | この法律の施行地をいう |
国外 | この法律の施行地外の地域をいう |
美術の著作物 | 美術工芸品を含む |
映画の著作物 | 映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含む |
写真の著作物 | 写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含む |
公衆 | 特定かつ多数の者を含む |
法人 | 法人格を有しない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含む |
上演、演奏、口述 | 著作物の上演、演奏又は口述で録音され、又は録画されたものを再生すること(公衆送信又は上映に該当するものを除く)及び著作物の上演、演奏又は口述を電気通信設備を用いて伝達すること(公衆送信に該当するものを除く)を含む |
貸与 | いずれの名義又は方法をもってするかを問わず、これと同様の使用の権原を取得させる行為を含む |
著作権法第3条「著作物の発行」
著作権法第4条「著作物の公表」
著作権法第4条の2「レコードの発行」
レコードは、その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が、複製権を有する者又はその許諾を得た者によって作成され、頒布された場合において、発行されたものとします。
(ただし、譲渡権又は貸与権等を有する者の権利を害しない場合に限ります。)
著作権法第5条「条約の効力」
著作者の権利及びこれに隣接する権利に関し条約に別段の定めがあるときは、その規定によります。
まとめ
第2回の記事では、著作権法「第1章総則 第1節通則」までの内容を解説しました。
通則では、
①著作権法の目的
②著作権法における用語の定義
③著作物の発行・公表
④条約の効力
に関する規定が置かれています。
これらの規定は著作権法全体について適用されますので、正確に理解しておくことが重要です。
第3回では著作権法「第1章総則 第2節適用範囲」について解説します。