基礎法学 〜法律の基礎〜

基礎法学〜法律の基礎〜 基礎法学
基礎法学〜法律の基礎〜

はじめに

このページ「基礎法学」では、具体的な法律を学ぶ前に知っておいてほしい法律の基礎について解説します。

法律とは?

法律とは、身近な言葉で言い換えると「ルール」のことです。
野球やサッカーなどのスポーツにルールがあるように、社会で生活していく上で守らなければならない法律というルールが存在します。
法律が他のルールと大きく異なる部分は、「強制力のある社会的な制裁=サンクション」を伴うことです。

日本の法令の種類は千数百あり、様々な体系・分類が存在します。
そうした法律の体系や分類を理解しておくことで、条文や判例の解釈などの作業効率がアップし、知識の応用が利きやすくなるメリットがあります。

そのため、まず法律の基礎を理解し、その後に具体的な法令や判例などの学習にあたることをオススメします。

また、意味が理解できていない単語に関しては、その都度調べて正確な意味を理解しておくことが重要です。

法律の目的

法律とは何を目的として定められているのでしょうか?
それは、権利や義務を定め、紛争が起きた場合にその定めにしたがって解決を図るためです。
そして、それらを実現するための法律の機能が、①社会統制、②活動促進、③紛争解決、④資源配分の4つです。

法律の目的
機能実現方法代表的な法令
社会統制強制力を伴う社会的制裁(サンクション)刑法
活動促進私的自治民法
紛争解決裁判民事訴訟法、刑事訴訟法
資源配分社会保障国民年金法、生活保護法

法律の基準による分類

次に、「法規範」という分類方法で法律を見ていきましょう。
規範とは、「行動や判断の基準」のことです。

法規範には①行為規範、②裁判規範、③組織規範があります。

法規範
規範の種類何に関する規範(基準)か?
行為規範行動の基準=命令規範(しなければならない)禁止規範(してはいけない)
裁判規範裁判の基準
組織規範国家機関の権限や組織構成を定める基準

六法とは?

日本の法律の数は千数百あります。
その中で6種類の重要かつ基本的な法律である憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法を六法といいます。

ただし、「六法全書」は上記の6種類以外の法令も記載されており、その法令数は約800あります。

法源(裁判の基準)

法源(裁判の基準となるもの)には、①成文法、②不文法があります。

①成文法とは、文書の形式で表記されるものです。
②不文法とは、文書の形式がないものの中で、法的拘束力を有するものです。

法源(裁判の基準)
法源種類
成文法法律、条約、命令(政令、省令)、条例、規則
不文法慣習、判例、条理

法律の性質による分類

法律の性質による分類の主なものとして、①公法と私法、②実体法と手続法、③民事法と刑事法、④一般法と特別法、などがあります。

法律の性質による分類
分類概要具体的な法令
公法国や地方公共団体と私人との関係について定めた法憲法、行政法、刑法、民事訴訟法など
私法私人間の関係について定めた法民法、商法、会社法など
実体法法律関係や権利、義務の発生・変更・消滅などについて定めた法憲法、民法、商法、刑法など
手続法実体法の内容を実現するために定めた法民事訴訟法、刑事訴訟法など
民事法私法に関する、実体法+手続法民法、民事訴訟法など
刑事法犯罪と刑罰に関する、実体法+手続法刑法、刑事訴訟法など
一般法国民一般を対象に広く適用される法※一般法と特別法の関係は相対的
特別法特定の場合に適用される法

※一般法と特別法の関係は相対的です。
例えば①民法を一般法とした場合、特別法は商法や借地借家法などとなり、②商法を一般法とした場合、特別法は会社法などになります。

法律の優先順位

法律には優先順位があります。種類として①上位法の優先、②特別法の優先、③後法の優先があります。
①>②>③の順で優先されます。
つまり、①上位法が最優先され、②同順位の法であれば特別法が優先され、③特別法がなければ後法が優先される、ということです。

①上位法の優先については、下のピラミッド図の通りです。上の階層の法律が優先されます。

②特別法の優先
ある法において、一般法と特別法が存在する場合は特別法が優先されます。

③後法の優先
ある法において、上位法が存在せずかつ特別法がない場合は、新しく制定された法が優先されます。

強行規定と任意規定

強行規定とは、お互いの合意があっても、法律の規定どおりにしなければならない規定のことです。
任意規定とは、お互いの合意があれば、法律の内容と異なる契約も可能な規定のことです。
刑法や行政法などの分野では強行規定が多く、民法や商法などの分野では任意規定が多い傾向があります。

法律に違反すると?

法律に違反した場合、民法上では不法行為や債務不履行などの責任を負い、損害賠償義務が発生する可能性があります。
刑法上では、刑罰が課される可能性があります。
また、法令によっては罰則規定の定めがあり、規定された罰則が課される可能性があります。

裁判

裁判とは、裁判機関(裁判所や裁判官など)がある事件に関して、事実を確認し、該当する法律を解釈・適用した上で、紛争を解決するための手続きのことです。

裁判は大きく分けると、①民事事件、②刑事事件、③行政事件を扱うものがあります。

民事事件とは、個人間・企業間の紛争などに関する事件です。
刑事事件とは、犯罪行為があると疑われる場合などに、有罪・無罪の決定や、どのような刑罰を適用するかということに関する事件です。
行政事件とは、国や地方公共団体の行為など、行政に関連した争いに関する事件です。

裁判の流れ

日本の裁判では、三審制が採用されています。

三審制とは1つの事件につき、3回まで裁判を受けることができる制度をいいます。
第一審の判決に不服がある場合に、第二審(控訴審)で再び裁判を求めることを「控訴」と呼びます。
さらに、第三審(上告審)で裁判を求めることを「上告」といいます。

原則として、第一審は地方裁判所で、第二審は高等裁判所で、第三審は最高裁判所で行われます。

事実審と法律審

裁判の審理には「事実審」と「法律審」があります。

事実審とは、事実問題と法律問題に関して審理することです。
法律審とは、法律問題のみを審理することです。

事実審と法律審
訴訟類型第一審第二審第三審
民事訴訟事実審事実審法律審
刑事訴訟事実審

原則:法律審

例外:事実誤認や量刑不当に関する審理=事実審

法律審

判決の種類

判決の種類
訴訟類型判決説明
民事訴訟請求認容原告の請求を認める判決
請求棄却原告の請求が認められない判決
却下訴訟の要件を欠き、訴えが不適法な場合に、審理せず門前払いにする判決
刑事訴訟有罪犯罪の事実が証明された場合にする判決
無罪犯罪にならない行為、または犯罪である証拠が不十分である場合にする判決
公訴棄却訴訟要件を欠き、訴えが不適法な場合に、公訴の提起を棄却する判決
免訴判決公訴権が消滅した場合に、裁判を打ち切る判決

※上訴裁判所の出す判決には「棄却判決」と「破棄判決」があります。

「棄却判決」は原審の判決を維持するものです。
「破棄判決」には、①破棄差戻し判決(原審に事件を戻して、再判決させる)と、②破棄自判決(上訴裁判所が自身で判決する)の2種類があります。

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